3. 結 果 及 び 考 察
1)ラインアウトの人数別比率
  分析対象となった全てのラインアウトについて人数別に頻数と割合を求めた結果が表2である。 この結果から、オールメン(7人)のラインアウトが最も数が多く半数以上を占めることが認められた。 このことは、ラインアウトの防御戦術を検討する際に、まずオールメンラインアウトから始めることが妥当であることを示すもの であると考えられる。  

表2 ラインアウトの人数別比率
オールメン 2人 3人 4人 5人 6人 クイックスロー
184 1 13 51 61 18 2 330
56% 0% 4% 15% 18% 5% 1%
2)オールメンラインアウトの防御戦術の種類
  オールメンラインアウトの防御プレーを分析した結果、大きく次の3つの戦術を特定することができた。
  1. 2つのユニットで相手スローに競りに行く防御戦術
  2. 3つのユニットで相手スローに競りに行く防御戦術
  3. 相手スローには競りに行かず次のモールドライブに備える防御戦術
  これらの内、2つのユニットで相手スローに競りに行く防御戦術としては次の3つの戦術が特定された(動画1〜3参照)。

動画1 3-3-1システム


    動画2 3-1-3システム


動画3 Th2-3-2システム

  1. ラインアウトに並んでいる7人のプレーヤーのうち、最後尾のプレーヤーだけを残して前から 「サポーター・ジャンパー・サポーター」のユニットを2つ作り、これら2つの防御ユニットが前後に動き ながら相手スローに競りに行く3-3-1システム
  2. 防御の3人ユニットを列の前方と後方に配した3-1-3システム術
  3. スローワーの位置にいるプレーヤーを最初の防御ユニットでサポーターとして使い、 後ろに2人残したTh2-3-2システム注1)。

  次に、3つのユニットで防御する戦術としては次の6つの戦術が特定された(動画4〜9参照)。

動画4 2-3-2システム


    動画5 3-2-2システム


動画6 Th2-2-3システム


動画7 3-3-1SHシステム


    動画8 2-2SH-3システム


動画9 Th2-3-2SHシステム

  1. ジャンパーを1人でサポートするプレーを導入しながら、列に並んでいるプレーヤーだけで 防御しようとする2-3-2システム
  2. ジャンパーを1人でサポートするプレーを導入しながら、列に並んでいるプレーヤーだけで 防御しようとする3-2-2システム
  3. 1人サポーティングに加えてスローワーの位置にいるプレーヤーを使用したTh2-2-3システム
  4. 1人サポーティングに加えてスクラムハーフの位置にいるプレーヤーを使用した3-3-1SHシステム注1)
  5. 1人サポーティングに加えてスクラムハーフの位置にいるプレーヤーを使用した2-2SH-3システム
  6. 1人サポーティングに加えてスローワーの位置にいるプレーヤーとスクラムハーフの位置にいる プレーヤーの両方を使用したTh2-3-2SHシステム

  さらに、相手スローに競りに行かないで次のモールドライブに備える防御戦術としては次の2つの戦術が特定された。
  1. 全員でモールドライブに備えるシステム
  2. 前の3人は相手スローに競りに行き、残りのプレーヤーでモールドライブに備えるシステム

3)各防御戦術の使用頻度

  特定されたそれぞれの防御戦術の使用頻度を全地域トータルと地域別で示した結果が表3である。これを見ると、相手スローに防御をしなかったケースは1割もなく、現在の国内大学トップレベルではラインアウトで意図的な防御が行われることが普通であることがわかる。

表3 各防御戦術の使用頻度に関する分析結果
防御戦術 地域1 地域2 地域3 地域4 地域5
2つのユニットで相手スローに競りに行く戦術
3-3-1 80 15 15 13 23 14
44% 60% 54% 45% 62% 23%
3-1-3 2 0 0 1 1 0
1% 0% 0% 3% 3% 0%
Th2-3-2 9 2 2 2 2 1
5% 8% 7% 7% 5% 2%
3つのユニットで相手スローに競りに行く戦術
2-3-2 8 0 3 3 1 1
4% 0% 11% 10% 3% 2%
3-2-2 1 0 0 0 1 0
1% 0% 0% 0% 3% 0%
Th2-2-3 4 2 0 0 0 2
2% 8% 0% 0% 0% 3%
3-3-1SH 5 0 1 0 2 2
3% 0% 4% 0% 5% 3%
2-2SH-3 7 1 2 3 0 1
4% 4% 7% 10% 0% 2%
Th2-3-2SH 15 3 1 4 4 3
8% 12% 4% 14% 11% 5%
相手スローに競りに行かず次のモールドライブに備える戦術
全員でモールドライブに備える 36 0 2 0 1 33
20% 0% 7% 0% 3% 54%
前3人は相手スローに競りに行き残りでモールドライブに備える 2 0 0 0 0 2
1% 0% 0% 0% 0% 3%
意図的な防御なし 11 2 2 3 2 2
6% 8% 7% 10% 5% 3%
180 25 28 29 37 61


  防御戦術の種類ごとで使用頻度を見てみると、相手スローに直接競りに行く防御戦術が全体で7割強と 使用頻度が高いことが認められるが、自陣深く攻め込まれた地域5だけに限定すると、相手スローに競りに行かない で次のモールドライブに備える防御戦術が5割強の高い使用頻度を示していることがわかる。

  相手スローに直接競りに行く防御戦術について、防御システムの種類ごとで使用頻度を見ると、2つのユニットで 防御する3-3-1のシステムが特に多いことがわかる。その他の防御システムについては、Th2-3-2SHのシステムの使用頻度 が若干多いことが認められるが、他のシステムはいずれもトータルで10例以下と頻度的には非常に少ないことが認められた。 そして、このような傾向は地域別に見ても同様であった。


4)各防御戦術の有効性

  特定されたそれぞれの防御戦術について、総ボール獲得率と良質ボール供与率を示した結果が表4である。この表から、すべての防御戦術の中で特に数が多かった3-3-1の防御システムでは、3割弱で相手ボールを獲得しており、相手に良質ボールを与えている割合が5割弱であることがわかる。これをどのように評価するかは難しいところであるが、防御戦術としてそれほど低い水準のパフォーマンスではないと考えられる。

表4 各防御戦術のパフォーマンスに関する分析結果
防御戦術 防御時
総ボール獲得率
防御時
良質ボール供与率
頻数
2つのユニットで相手スローに競りに行く戦術
3-3-1 28% 48% 80
3-1-3 50% 50% 2
Th2-3-2 0% 67% 9
3つのユニットで相手スローに競りに行く戦術
2-3-2 38% 50% 8
3-2-2 0% 100% 1
Th2-2-3 75% 0% 4
3-3-1SH 40% 60% 5
2-2SH-3 14% 57% 7
Th2-3-2SH 7% 73% 15
相手スローに競りに行かず次ぎのモールドライブに備える戦術
全員でモールドライブに備える 14% 75% 36
前3人は相手スローに競りに行き残りでモールドライブに備える 0% 100% 2

  3-3-1の防御システムの有効性をさらに検討するために、スローの位置別に総ボール獲得率と良質ボール供与率を示した結果が表5である。オールメンのラインアウトでは2番ジャンパーを中心とした前部、4番ジャンパーを中心とした中央部、6番ジャンパーを中心とした後部の3箇所に潜在的なボール獲得部があるが、3-3-1のシステムではこれら3箇所の潜在的ボール獲得部を2つのユニットで防御しなければならない。したがって3-3-1のシステムでは、いずれの防御ユニットにおいてもジャンパーを2人でサポートできるという利点がある反面、両端の防御が手薄になる弱点があると考えられる。表5の結果でも、2番と6番にボールが投げられた場合に、達成されたパフォーマンスの水準が比較的低いことが認められ、このシステムの弱点を裏付ける結果が示されていると考えられる。  

表5 3-3-1システムのスローの位置別に見たパフォーマンス
スローの位置 防御時
総ボール獲得率
防御時
良質ボール供与率
>頻数
2番 9% 59% 32
3番 33% 33% 6
4番 42% 42% 26
5番 50% 33% 6
6番 30% 40% 10


  2つのユニットで防御する戦術には、他に3-1-3のシステムとTh2-3-2のシステムが特定されたが、例数が少ないために表4の結果から有効性を論じることは困難であった。しかし、これらの防御システムも2つのユニットで防御している限り、3-3-1の防御システムと同様の弱点を持っていると言えるであろう。  

  2つのユニットで防御する戦術の弱点を克服しようとした戦術が、次の3つのユニットで相手スローに競りに行く戦術である。この戦術を実行可能にするためには、ラインアウトに並んでいるプレーヤーが7人しかいないために何らかの戦術的工夫が必要となる。1つの工夫は、1人でジャンパーをサポートするプレーの導入であり、もう1つの工夫はラインアウトに並んでいるプレーヤー以外のプレーヤー、すなわちスローワーの位置にいるプレーヤーとスクラムハーフの位置にいるプレーヤーの活用である。  

  これらの戦術的工夫を取り入れた防御システムが、本研究では6種類特定された。これらの防御システムには、オールメンラインアウトにおける3箇所の潜在的ボール獲得部をすべて防御できるという強みと引き換えに、1人サポーティングは技術的・体力的に習熟が難しい、スローワーの位置にいるプレーヤーの使用はそのプレーヤーが後ろに動けないために防御ユニットの後方のスローに弱い、スクラムハーフの位置にいるプレーヤーの使用は反応動作が遅れる、というような弱点があることを理論的に導き出すことができる。しかし、本研究の分析ではいずれも例数が少なかったために、表4の結果に基づいて実証的見地から有効性を論じることは難しい。したがって、これらの防御システムがどの程度有効かに関しては、今後の研究を待たなければならない。

  最後に、相手スローに競りに行かず次のモールドライブに備える戦術に関する表4の結果を見ると、総ボール獲得率と良質ボール供与率のいずれの観点からもパフォーマンスの水準が低いことが認められた。しかし、これはこの戦術の意図から言って当然の結果であるとも言えるので、次に、ボールを相手に与えた後の防御のパフォーマンスを調べた。その結果が表6である。この結果を見ると、ゲインライン突破(前進)阻止とボール奪回のいずれの点からもこの防御戦術の成功率は決して高いとは言えず、モールからボールが出た後の防御プレーを含めるとトライもおよそ2割(33回中7回)の頻度で奪われている。したがって、この防御戦術に関しては、ボールを取らせた後の防御パフォーマンスをもっと高める研究が必要であるとともに、一方で、自陣ゴール前においても積極的に相手スローに競りに行く防御戦術の研究が必要になってくるであろう。

表6 相手スローに競りに行かずモールドライブに備える防御戦術のボール供与後のパフォーマンス
ゲインライン突破
(前進)阻止率
ボール奪回率 被トライ率
モールドライブに対する防御 33% (10/30) 0% (0/33) 9% (3/33)
モールからボールが出た後の防御 48% (11/23) 17% (4/23) 17% (4/23)
                   (防御プレー総数)                                    (33)