私の研究のフィールドは、体育科学の中で武道を研究対象とし、これに文献学的アローチをする「武道学」という領域です。

 武道は、本来戦闘の技術であったものが、日本の長い歴史の中で、信仰や宗教、政治、芸能など様々な文化と交流をもちつつ、それ自体が優れた身体運動文化として完成したものです。従って、武道の大きな特徴の一つは、その文化性にあります。特に武道の精神文化的な要素は、現在、世界中から注目されています。

 私は、武道の文化的側面を、文献史料を読み解くことにより明らかにし、これを日本精神史の中に位置づけていく研究をしています。

 具体的には、日本人が刀剣を神聖視なものとして観念する思想(刀剣思想)を、特に古代においては東アジア三国(日本・中国・朝鮮)のフィールドの中で特徴づけつつ、通史的に明らかにしてきました。これについては既に20年以上も継続的に研究をつづけてきており、ある程度の成果を得てきています。現在は最後のまとめの段階にあると考えています。

 また、近年取り組みつつあるのが、武道における身心関係についての問題です。

 武道は、基本的には身体運動の技術ですが、これに心が与える影響は多大であり、身体と心は切り離すことができないということを前提に、身心関係についての高度な理論が構築されてきました。武道はそもそも生死の境の場を前提としていたため、極限状況で乱れる心が身体に影響すれば即死につながることから、身体と心の問題は競技化される以前の武道にとっては解決すべき喫緊の課題であったわけです。これについての洗練された理論は、近世(江戸時代)に完成されたと考えられています。

 現在私は、この武道における身心関係、心法論(心を理想的な状態に高める工夫についての理論)について、近世を中心に、深い考察をしていきたいと考えています。

 近世の武道における身心の問題は、現代社会における様々な問題に示唆を与えてくれます。刀剣思想も含めて、古(いにしえ)のことをよく稽(かんが)えてこれを今に照らしつつ、まさに“稽古照今”をモットーに研究活動をしていこうと思っています。                     

主 著
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Toshinobu SAKAI, Ph.D.

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Topics
Research

『日本精神史としての刀剣観』 第一書房

Ideology of the Sword, Nippon Budokan
『刀剣の歴史と思想』 日本武道館
研究業績
『英訳付き 日本剣道の歴史』 スキージャナル
A Bilingual Guide to the History of KENDO