ヨウ素 / マグネシウム

 ヨウ素は、エネルギーの代謝や成長期の発育促進に関与する甲状腺ホルモンの成分である。不足すると甲状腺腫をおこす。ヨウ素は、海藻類 (わかめ、昆布、ひじき、のりなど) および魚介類に多く含まれており、日本人の食生活ではほとんど不足することがない。

 マグネシウムは、体内でその約 70% がリン酸マグネシウムや炭酸マグネシウムとしてに存在する。残りの約 30% が筋肉、脳、神経、血液などの軟組織中にある。マグネシウムの働きは、刺激に対する筋肉の興奮性の調節や、ある種の酵素の活性化でる。

 慢性的な欠乏状態は、虚血性心疾患 (狭心症や心筋梗塞) の原因になるとも言われている。果物 (バナナ、メロン、すいかなど) 、野菜 (とうもろこし、ほうれん草、枝豆など) 、種実 (カシューナッツ、アーモンド、ピーナツ、ごまなど) などの植物性食品中に多く含まれている。


銅 / 亜鉛

 銅は、体内の含有量は微量であるが、心臓、肝臓、腎臓などに含まれ様々な役割を担っている。銅は鉄の代謝に必須で、骨髄でヘモグロビン(赤血球中のたんぱく質で酸素の運搬をしている。)が作られるのを助ける。この他、腸管からの鉄の吸収を促進する。銅が不足するとヘモグロビンの合成が減少し貧血の原因となる。一般に、日本人の食生活では、銅が不足することはほとんどない。レバー、貝類、豆類に多く含まれている。

 亜鉛の体内含有量もごく微量であるが、皮膚、肝臓、腎臓などに含まれる。血液中の糖の量の調節などに関係するホルモンのインスリンなど、多くのホルモンの成分として重要である。また、皮膚・骨格の発育にも必要である。不足すると味覚障害や脱毛、皮膚炎を起こすが、日本人の食生活においては、一般ではほとんど不足することがない。かき、うなぎ、レバー、乳製品、豆類などに多く含まれている。


セレン / マンガン

 マンガン、セレンともに、第六次改定日本人の栄養所要量-食事摂取基準- で、初めて新しく栄養所要量が設定された。

 マンガンは地中に多く存在するが、ヒトの体内には 15mg 前後 (1g の 1/1000 が 1mg) と極めて微量しか存在しない。しかし体内での重要な役割の一つとして、エネルギー代謝 (体内でエネルギーを作り出すこと) の円滑化に関わる酵素の成分となっていることが挙げられる。

 マンガンが不足すると、骨の代謝や糖質・脂質の代謝が阻害されたり、血液の凝固能が低下したりする事が知られているが、通常の食生活で不足することはほとんどない。食品としては、穀類、野菜類、果実類に比較的多く含まれている。

 セレンも微量ではあるが体内で酵素の重要成分となっており、抗酸化物質として働く。食品中は魚介類、レバー、卵、穀類、肉類、乳製品の順に多く、通常の食生活ではほとんど不足しない。


クロム / モリブデン

 クロム、モリブデンともに第六次日本人の栄養所要量-食事摂取基準-で、初めて新しく栄養所要量が設定された。

 

 クロムは、体内には極微量しか存在しないが、糖質および脂質の代謝を正常に行うために必須である。様々な食品に含まれるので、通常の食生活でクロム摂取が不足することはまず無い。しかし、極端な砂糖の過剰摂取、極度の運動、けがによりクロム排泄量が増加することから、これらの場合体内のクロム量の低下の危険性が考えられる。比較的多く含まれる食品は、牛肉、パン (小麦粉) である。

 モリブデンも体内には極めて微量しか存在しないが、肝臓や血液中に比較的多く含まれる。様々な酵素の成分として重要で、とくにたんぱく質や遺伝子の代謝の円滑化に関係している。通常の食生活では不足の心配はない。食品では、牛乳/乳製品、豆類、レバー、穀類に比較的多く含まれる。


ビタミン A

 「レチノール」とも言います。

 ビタミンは性質の違いから脂溶性と水溶性に分類されますが、ビタミン A は脂溶性で、水に溶けず、油脂に可溶で、過剰摂取による弊害に注意が必要です。

 ビタミン A は、皮膚、特に粘膜の組織と眼の機能を正常に保つ働きがあり、光の刺激を脳に伝えるために必要な物質の体内での再合成に必須となっています。ビタミン A が体内で不足すると、夜盲症となるのはこのためで、症状が進むと失明することもあります。世界中では貧しさのために、ビタミン A 不足のために失明する子どもたちが毎年多くいます。この他、ビタミン A の欠乏症には角膜乾燥症、皮膚・粘膜の傷害、子どもの発育障害などがあります。

ビタミン A は動物性食品にのみ含まれ、とくに肝臓 (レバー) に多く含まれています。植物性食品にはビタミン A の仲間であるカロテンとして存在します。カロテンは体内で必要に応じてビタミン A に変換され利用されます。カロテンはにんじん、ほうれん草などの緑黄色野菜に多く含まれています。


ビタミン D

 「カルシフェロール」ともいいます。

 ビタミン D は、カルシウムの代謝に密接な関係のある脂溶性ビタミンです。

 主な役割は、十二指腸および小腸上部からのカルシウムの吸収の促進、骨や歯へのカルシウムの沈着の促進などです。体内で実際に機能するのは、肝臓および腎臓において活性化された活性型ビタミン D で、これはホルモンのような代謝調節作用を持ちます。

 ビタミン D が体内で不足すると、くる病や骨軟化症になる他、 一般に骨量も減少します。日本では、骨粗鬆症の予防・治療にビタミン D 剤はよく用いられています。

 ビタミン D を多く含む食品は肝油、卵黄、バター、脂肪の多い魚(いわし、ぶり、さんまなど)、うなぎなどです。一方、紫外線にあたることで、人の皮膚の下でコレステロールの仲間のプロビタミン D (7- デヒドロコレステロール) からビタミン D が合成されます。ですから、適度に (1 日10〜30 分程度) 屋外に出て、散歩などをしながら日光浴をすると良いでしょう。


ビタミン E

 「トコフェノール」とも言います。

 ビタミン E は、体内の脂質の酸化防止や細胞の老化防止作用があると言われています。この抗酸化作用を期待して、食品の酸化防止のために、さまざまな食品に添加されるようになっています。 ビタミン E が不足すると、細胞膜が破壊されやすくなり、赤血球が壊れやすくなると言われています。ビタミン E は、植物油 (大豆油、綿実油など) や、牛乳、卵黄に多く含まれています。


ビタミン K

 「フェロキノン」ともいう。

 ビタミン K の主な作用は、血液凝固に必須のプロトロンビンの生成の調節です。また、この他解毒作用や利尿作用、骨のたんぱく質成分の合成促進作用による骨の形成の促進などがあります。

 不足すると血液凝固不全や出血性疾患になる心配があります。主に納豆緑黄色野菜レタス、キャベツなどに多く含まれます。さらに、食品からの摂取の他、腸内細菌によっても合成されます。

 また、最近では、骨粗鬆症の治療にビタミン K 剤が使用されるようになってきています。


ビタミン B1

 「チアミン」とも言います。

 ビタミン B1 は、体内での糖質の代謝に必須な補酵素で、糖質からエネルギーを作り出す時に欠かすことができない栄養素です。ビタミン B1 が不足するとエネルギーの産生過程が阻害され、体内に中間物質が蓄積されるために、神経や筋肉に障害を与え、脚気や倦怠感、疲労感、消化不良、食欲減退、体重減少などが起こります。

 ビタミン B1胚芽、豆類、肉類 (とくに豚肉) に多く含まれています。精白米にはごく少量しか含まれないため白米の摂取が多い場合不足しがちとなります。しかし米の胚芽と外皮に多く含まれているため、胚芽米にはビタミン B1 が多く含まれます。また、白米にビタミン B1 を添加した強化米が市販されていて、これを少量白米に混ぜると充分量摂取できます。

 ビタミン B1 は水溶性のため水に溶けやすく、加熱に対してもやや不安定なため、調理による損失があると言われています。


ビタミン B2 / ナイアシン

 ビタミン B2 は「リボフラビン」、ナイアシンは「ニコチン酸」とも 言います。

 ビタミン B2 とナイアシンは、糖質、脂質、たんぱく質の代謝の補酵素として働きます。とくに糖質・脂質・たんぱく質からのエネルギー産生の課程には不可欠です。

 また、ビタミン B2 には発育促進作用が、ナイアシンには消化管機能の正常化、皮膚や粘膜の保護作用があります。

 ビタミン B2 が欠乏すると口唇炎、舌炎、口角炎、発育障害、体重減少などがおこります。ビタミン B2 を多く含む食品の代表は、レバー、チーズ、卵、ピーナツ、緑色野菜です。

 ナイアシンが不足すると、ペラグラと呼ばれる皮膚症状が体の左右対称に現れたり、下痢、神経症、口舌炎などをおこします。ナイアシンは様々な食品中に含まれますが、とくにレバー、肉類、魚類に多く含まれています。

 ビタミン B2 ・ナイアシンともに水や熱に比較的安定で、調理による損失は少ないとされています。