エネルギー

 人にとってエネルギーとは、生命の維持活動 (呼吸、消化、吸収など) や生活活動 (歩く、走る、話す、考えるなど) を行うための原動力です。このエネルギーは、様々な食品の摂取によって取り込まれる三大栄養素の糖質 (米、小麦などに含まれる) ・脂質 (油類) ・たん白質 (肉、魚、卵など) から作られます。なかでも糖質が最も重要で、糖質は、世界中の多くの国で主食として最も多く摂取されています。

 食べた食物からエネルギーを効率よく作り出すためにはビタミンB群 (野菜や肉類に含まれる) の摂取が必ず必要で、「パンにコーヒー」だけのような朝食では、体内でスムーズにエネルギーを作り出すことは不可能です。

 一方、食べ過ぎによるエネルギーの過剰摂取や運動不足などによるエネルギーの消費不足では、余ったエネルギーが体内で脂肪となって蓄えられるため、肥満の原因になります。最近、中高年男性の肥満傾向、若年女性のやせ傾向が問題となっており、将来の生活習慣病予防の観点からも、これらはエネルギー摂取と大きく関係することから、その改善が望まれています。


糖質

 通常、人が最も多く摂取している栄養素が糖質で、主に、生命の維持や生活活動のエネルギー源として体内で利用されています。

糖質には様々な種類がありますが、代表的なものはでんぷん (米・小麦に含まれる) 、ぶどう糖しょ糖 (砂糖) ・乳糖 (牛乳に含まれる) などです。いずれもエメルギー源として体内で利用されますが、ぶどう糖は、脳にとっての唯一のエネルギー源です。

 人が主食として多く食べているご飯、パン、麺類にはでんぷんが豊富に含まれていますが、穀類の他、芋類・豆類にもでんぷんは多く含まれています。近年、日本では食習慣の欧米化などにより、米や芋類、豆類の消費が減少しており、糖質(とくにでんぷん)の摂取量は減少の傾向にあります。その反面、脂質の摂取が増加傾向にあり、肥満・糖尿病・高脂血症などの生活習慣病が懸念されています。また、しょ糖は砂糖の主成分で、最も重要な甘味料ですが、現在は虫歯や肥満などの弊害が問題視されており、しょ糖(砂糖)は過剰摂取にならないよう注意が必要とされています。


脂質 (脂肪)

 食品中の脂質は主に中性脂肪 (脂肪あるいは油脂ともいう) で、代表的な食品はサラダ油、バター、マーガリン、マヨネーズなどで、この他肉類、青皮の魚類 (秋刀魚、鰯、鯖など) にも多く含まれています。食品中には、中性脂肪の他に細胞膜の成分やホルモンの材料となるリン脂質やステロール類が含まれますが、これらはナッツ類や肉類の油に比較的多く含まれます。

 実際の食生活では、一般に植物性油脂 (魚油を含む) と動物性油脂を 2 : 1 の割合を目安として摂取すると良いとか、植物性油脂と動物性油脂と魚油 (魚に含まれる油) を 5 : 4 : 1 の割合を目安として摂取すると良いとされています。体内で合成できないために必ず食事で摂る必要がある必須脂肪酸のリノール酸、リノレン酸、アラキドン酸は植物油に多く、最近注目されているイコサペンタエン酸 (EPA) 、ドコサヘキサエン酸 (DHA)魚油に多く含まれます。

 脂肪はエネルギー源として利用される他、体内で胆汁、性ホルモン、ビタミン D などにも変化し、生体にとって極めて重要な役割を担っています。しかし、近年、食生活の欧米化に伴い、脂肪の摂取が過剰傾向にあるので摂り過ぎには注意が必要です。


たんぱく質

 たんぱく質は、人や動物の体 (筋肉、皮膚、骨、髪の毛など) を構成したり、生理的調節や代謝調節 (ホルモンや酵素など) を行う重要な栄養素です。

 たんぱく質を多く含む食品の代表は、卵、牛乳、肉、魚、大豆製品ですが、小麦粉、米などにも比較的多くのたんぱく質が含まれています。各食品に含まれているたんぱく質の種類はそれぞれ異なり、栄養的な価値が異なります。一般に植物性たんぱく質より動物性たんぱく質の方が栄養価が高くなります。ただし植物性たんぱく質のなかでも大豆のたんぱく質は、動物性たんぱく質と同様に栄養価が高い (大豆を「畑の肉」というのはこのため) ことが知られています。

 日常の食生活においてたんぱく質の摂取を考えたとき、重要なことはその質と量で、動物性食品と植物性食品を組み合わせることで、それぞれのたんぱく質の栄養価を補い合い栄養価を総合的に高めることができます。したがって、食品を上手に組み合わせることが大切です。

 また、たんぱく質は体内でエネルギー源としても消費されます。


食物繊維

 人の体内で消化されない成分を総称して食物繊維という。

 食物繊維は体内で消化されないため吸収もされないので、エネルギー源や体成分としては利用されない。しかし、最近、食物繊維のさまざまな生理機能が明らかとなり注目されている。食物繊維には、セルロース、ペクチン、海老や蟹の殻に含まれるキチンなどがある。セルロースは芋類、ごぼう、キャベツ、レタスなどの野菜類に、ペクチンは果物に比較的多く含まれる。この他、こんにゃくやきのこ類、海藻類にも多くの食物繊維が含まれる。

 食物繊維の生理作用は、

  1. 糖質の吸収を遅らせ肥満や糖尿病を予防
  2. コレステロール吸収を阻害
  3. 胆汁代謝の正常化により胆石を予防
  4. 便秘を予防し、便通を整える
  5. 発ガン物質など有害物質を吸着して排泄
  6. 食事量を多く見せ食べ過ぎを防止
  7. 咀嚼回数増加に伴う口腔内浄化
などがある。


カルシウム

 カルシウムは、我々日本人の食生活で最も不足しがちな栄養素です。

 体重 50kg の成人で体内に約 1kg のカルシウムが存在します。そして、体内のカルシウムの約 99% が骨や歯に存在し、骨や歯を硬い組織としています。また、骨はカルシウムの貯蔵庫としての役割も果たしています。

 残りのわずか 1% 弱のカルシウムは血液・体液・軟組織に含まれ、筋肉の収縮、血液凝固・神経伝達など、生命活動に直接関与しています。

 したがって、生命に直接関係する血液中のカルシウムの量を維持するために、骨に蓄えられていたカルシウムを溶かし出したり、腸管からのカルシウムの吸収量を調節したりして、血液中のカルシウム量が一定になるように調節しているのです。

 そのため、カルシウムの摂取不足が続くと、骨からのカルシウム溶出が増え、骨量が減少し骨粗鬆症となってしまうのです。カルシウムを多く含む食品は牛乳および乳製品、骨ごと食べられる小魚、大豆製品などです。とくに牛乳・乳製品のカルシウムは体内での利用率が高く有効です。またカルシウムの代謝にはビタミン D、エネルギー量なども関与することから、これらの摂取も重要です。

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リン

 リンは体重 50kg の成人で体内に約 0.5kg 存在します。その約 80% がカルシウムと結合して骨や歯に存在し、硬組織を形成しています。残りの約 20% は生体のあらゆる組織に含まれており、体液バランスの調節、エネルギー産生とその蓄積、細胞膜成分の合成、様々な物質の代謝調節など生命活動に直結した役割を担っています。

 リンは多くの食品に含まれていますが、主に動物性の食品に多く含まれています。また、リンは多くの食品添加物に保水や防腐などの目的で利用されているため、加工食品 (ハム、ソーセージ、かまぼこなど) や半調理済み食品 (レトルト食品、冷凍食品など) などの中にも多く含まれています。したがって、通常ではリンの摂取が不足することはなく、むしろ過剰になる危険性があります。リンの摂取が多くなりすぎると、カルシウムの腸管からの吸収を妨げるなどの問題が起こるので、加工食品の摂取を控えるなど、過剰摂取に注意することが必要です。


 鉄は体内にごく微量しか含まれませんが、その役割は極めて重要です。鉄の摂取も不足しがちで、とくに若い女性はダイエットなどの目的で食事量が極端に減ったり、食事の内容が偏ったりするので、鉄の摂取不足に注意が必要です。

 体内の鉄の約 70% は赤血球中のヘモグロビンに含まれ、肺から各組織への酸素運搬を行っています。残りはほとんどが貯蔵鉄として肝臓に含まれる他、筋肉や骨髄にも存在します。肝臓中の鉄はフェリチンというたんぱく質の中にあって、必要に応じて血液中に放出されます。また、筋肉中の鉄は血液中の酸素を細胞内に取り込む役割を担っています。

 体内に鉄が不足すると、鉄欠乏性貧血になる他、疲れやすくなったりします。

 鉄の多い食品はレバー、ほうれん草、ひじき、貝類で、一般に動物性食品中の鉄の方が植物性食品中の鉄より吸収が良いと言われています。しかし、植物性食品中の鉄も肉や魚を一緒に摂取することによって吸収が良くなります。また、ビタミンC (生野菜や果物に多い) には鉄の吸収を促進する働きがありますので、食品の組み合わせに配慮することが大切です。

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ナトリウム

 ナトリウムは食塩の主成分です。ナトリウムは多くの食品に含まれている他、食塩を多く含む醤油、味噌などの調味料、漬け物類、加工食品にとくに多く含まれます。体内では血液、リンパ液、消化液などに含まれ、体液バランスの維持、神経の刺激感受性、筋肉の収縮作用などの役割を担っています。なお、体内のナトリウム量は、尿中に排泄されるナトリウム量によって調節されています。また、運動による発汗によるナトリウム排泄も無視できません。

 一般には、日本人の食生活ではナトリウムが不足することはなく、むしろ過剰摂取が問題となっています。日本の食習慣を考慮して成人で 1 日 10g 未満を目標としていますが、実際には 1 日に 13g 程度摂取しているのが現状です。レトルト食品や出来合いのお惣菜類の摂取や外食が増えると、食塩 (ナトリウム) の摂取は多くなりがちです。ナトリウムの過剰摂取は高血圧や脳卒中の原因として問題視されていることから、日頃から薄味を心がけることが重要です。


塩素 / カリウム

 塩素は、体内ではナトリウムやカリウムなどと結合して体液成分となって、主に胃酸の成分として利用されています。この他、体液バランスの維持・調節などにも利用されています。体内の塩素が不足すると、胃液の酸度が低下して食欲不振や消化不良を起こしますが、塩素はナトリウムと同様に食塩の主成分であるため、不足することはほとんどありません。塩素は食塩の他、食塩を多く含む醤油、味噌などの調味料、漬け物類、加工食品に多く、その他様々な食品中にも含まれています。

 カリウムは、体内では主にたんぱく質などと結合し、細胞内に存在します。主な働きは心臓および筋肉の機能調節で、この他、体液バランスの維持・調節などにも関与しています。体内のカリウムが不足すると筋力が低下します。

 カリウムは、様々な植物性食品中含まれますが、とくにバナナ、じゃがいも、大豆に多く含まれています。通常の食生活 (3食きちんと食べる) ではほとんど不足の心配はありません。